建物の歴史、記憶を大事にしながら 古い坂の町並みを守っていく

・NPO法人尾道空き家再生プロジェクトは2007年に活動開始、翌年NPO法人化
・北村洋品店を子育てママのためのサロンとして改修
・建て替えや新築不可能な空き家をいかにうまく活用し後世につたえていくかをモットーに活動している

建物の歴史、記憶を大事にしながら 古い坂の町並みを守っていく

尾道市

【プロジェクト(地域の交流場所)】

CMや映画、ドラマなどのロケ地として有名な尾道。尾道水道を臨む斜面には、別荘のような洋館、和風住宅、町屋が軒を接するように建ち並び、独特の景観を生み出しています。
しかし坂道を歩くと、何年も放置されたままの家屋も少なくないことに気が付きます。
この現状を目の当たりにし、何とかしなくてはと「NPO法人 尾道空き家再生プロジェクト」を立ち上げた豊田さん。
これまでのプロジェクトの歩みを教えてもらいました

豊田さんがプロジェクトを立ち上げたきっかけを教えてください。

大阪で働きながら、生まれ育った尾道で、尾道水道に面した斜面に建つ家(山手地区の空き家)でセカンドハウスになりそうな物件を探していました。その時に実感したのが、なかなか空き家はあってもその情報を受け取る仕組みがないということです。実際私は、現地を何度も歩いてまわり、町内会長を訪ね大家さんを教えてもらうなどして情報をかき集め、改めて不動産屋さんもさじを投げているような古い空き家がいっぱいあることがよくわかりました。

そんな中で出合ったのが、築80年近くの3階建の木造屋敷「ガウディハウス(旧和泉家別邸)」と、とんがり屋根が印象的な昭和30年代に建てられた「北村洋品店」です。この2軒を買い取り、改築を始めると同時に、30~50名の賛同者が集まって「尾道空き家再生プロジェクト」がスタートしました。

 

 

活動の拠点となっている「北村洋品店」の再生のはじまりを教えてください。

尾道駅のほど近くに北村洋品店はあります。現在1階は、子連れママのためのサロンとして開放しており、2階は空き家再生プロジェクトのオフィス兼ベビー服や子供服、おもちゃなどのリサイクル品の販売スペースとして活用しています。

ここは長年空き家で、ひどい雨漏りと主要構造部の腐食、そしてシロアリの被害がひどく、よく建っているな~と思えるぐらいに傷んでいて、建築的価値は低いものでした。でも、その趣のあるレトロさにひかれて購入することに。ワークショップ形式で多くの人の手を借りて、「家をづくりを学ぶ家」として再生することを決めました。

改築期間は1年ぐらい。置きっぱなしになっていた荷物を出すところから始めました。

 

こだわりのポイントを教えてください。

この建物のいちばんの特徴は、とんがり屋根です。もともとはボロボロのセメント瓦でしたが、雨漏りを防ぐため板金で覆い変身させました。1階の土間は2階の部屋を取り壊し、吹き抜けにしました。床のモザイクタイルは幼稚園児の作品で、海の中の生物をタイルでデザインしています。外壁の2階は、吹き抜けにする時に解体してできた床材を細かく切って、ウロコ壁に仕上げにしました。

 

 

1階の和室は、工事の途中で床下から出てきた井戸を生かして、まさに井戸端会議ならぬ談笑テーブルとして活用しています。周囲に設置した柱には楽しい絵を。描いたのは、尾道大学の美術生です。和室の隣にある台所はあまり手を加えず、レトロなタイルをそのまま生かしています。

 

 

2階の天井は、ジグラフィートというイタリアのフレスコ画の技法で仕上げられた、アーティスト・白水摩耶子さんの作品で、照明は「ボトルバーyes.」の徳永栄二さんの作品です。

しっくいを塗ったり、廃材で縁側をつくったり、一般の人、職人、アーティスト、子どもたちと、たくさんの人たちと一緒に家づくりを経験しました。

 

 

プロジェクトの活動は?

2007年にはじまったプロジェクトですが、現在会員はおよそ180名です。

2009年10月には、尾道市と協動で新たに「尾道市空き家バンク」をスタートさせました。

活動が相互に作用して、現在尾道の山手地区の空き家活用実績は100軒を超えました。移住者は150名超!空き家は暮らすだけでなく、お店や工房としても利用されています。

私たち空き家再生プロジェクトでは、コミュニティ、環境、建築、観光、アートの5つの柱を軸に活動を展開しています。尾道の面白い物件に注目し、技法や歴史的背景含め尾道の建築を理解していく「尾道建築塾」、空き家から運び出した家財道具を販売する「現地でチャリティ蚤の市」、草むしりやゴミ拾いをみんなで楽しむ「尾道空き地再生ピクニック」など、さまざまなイベントを定期的に開催しています。

移住希望者にはサポートメニューも用意しており、空き家を紹介するだけでなく、改修するための職人や業者を紹介、DIYの道具貸し出しなども実施しています。

 

 

移住希望者にあらかじめ伝えていることはありますか。

尾道の空き家の状況をしっかりお伝えしています。

お問い合わせをいただく方の多くは、坂道や裏路地など尾道らしいところに住みたい・お店をしたい、のどかな風景を見ながらゆったり暮らしたいなど、さまざまな夢や希望を持たれています。しかし、裏を返せば、そうした住まいは、隙間風が入るような古い木造住宅で、クルマが入らない場所だったりします。いいことばかりじゃないよと、カルチャーショックを受けないようにしっかりお伝えしています。あえてネガティブな情報ばかりを集めてユニークな絵と面白いコピーで紹介する「尾道暮らしへの手引書」も作っています。

 

 

空き家に関心のある方にメッセージをお願いいたします。

私たちは、尾道で暮らしたい方の定住促進はもちろん、移住された方が長く住み続けられるようあらゆる面でお手伝いしていきたいと考えています。

慣れない土地への移住を不安視される気持ちもよくわかります。当プロジェクトでは100組を超える実績がありますので、移住者同士自然とゆるやかなつながりが生まれています。

いろんな勉強会も実施していますので、尾道に定住をお考えの方はお問い合わせください。

 

 

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