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レイデックス・明石卓巳さんインタビュー(後編)

全国の地方が抱える空き家への課題。課題解消のために必要なのは、空き家を単体でとらえるのではなく、まちを活性化させる一つの要素として活用するという視点です。
大規模な再開発をしなくても、地域の歴史や資源を掘り起こし、「昔」に巻き戻すことで、まちの未来を変えていく。
そんな持続可能なエリアマネジメントの方法や、空き家を使いたい人を増やすための取り組みについて、クリエイティブディレクターとして数々の地域再生を手掛けてきた明石卓巳さんに話をお聞きしました。

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明石 卓巳さん

1968年岡山県岡山市生まれ。グラフィックデザインをベースとした企画会社・株式会社レイデックス代表取締役、クリエイティブディレクター。岡山県の繊維問屋街・問屋町や福山市伏見町などの地域再生に携わる。

デザインの力で、まちと人のポテンシャルを引き出す

− 「課題」は地域のポテンシャル

どんな地域にも、課題やストレスを抱えていますよね。例えば広島県は人口流出が課題の一つだと聞きます。ただ、私は「課題=可能性」でもあるのではないかと考えています。ストレスが溜まっているところに解消するためのコンテンツを埋め込んでいくと、まちが少しずつ良い方向に変化していきます。それは、視点を変えれば、その地域の「ポテンシャル」と言えるのではないでしょうか。

広島県では三次市が建築家の谷尻誠さんが歴史ある街並みを活かす取り組みをしていたり、福山市では同じく建築家の馬場正尊さんが旧デパートを活かした地域共創の複合施設「iti SETOUCHI」の設計を手掛けていたり、素敵な方々が関わっているプロジェクトがありますよね。そうした動きに、私自身も刺激を受けています。

− デザイナーと持続可能なチームづくりの大切さ

エリアマネジメントに必要なメンバーは、そのまちの行政、ビルオーナーなどの不動産関係者、お店や事業を営む人、暮らしている人。そして、私が絶対に必要だと考えているのがデザイナーの存在です。

デザインとは「メッセージの可視化」です。消費を生み出す場所には必ずデザインがあり、私たちはデザインによってつくられたものに囲まれて生活しています。それなのに、エリアマネジメントの現場では、デザイナーがいないことも少なくありません。文字だけの情報をいくら発信しても、果たしてどれだけの市民が読み込むでしょうか。まちが目指す価値観をビジュアルや空間で提示し、それに共感する人に集まってもらうためにも、デザインの力は欠かせません。ぜひ、チームにデザイナーを加えてほしいですね。

私のような外部から呼ばれたディレクターが0から1を立ち上げ、その後は1を10に育てられる地元の人材にバトンタッチしていく。そうした循環が生まれていくといいなと思います。

「この地域資源と地元企業の技術を組み合わせたら面白い」といった発想は、外部の視点からのほうが生まれやすく、それを実行するのは、まちをよく知る内部の人が向いていると感じます。地域内外の人、どちらがディレクターを務めるとしても、何かと矢面に立つ役割であることをまちの人が理解してあげることも必要だと思います。それが「続けやすさ」につながっていくのではないでしょうか。

最終的には地域内で自走できる体制を整え、私たちが年に一回ほどメンテナンスに入るようなかたちが、10年先を見据えたエリアマネジメントには理想的だと感じています。「デザインを組み込むこと」、「持続可能なチームづくり」の両輪が噛み合い、うまく回り始めると、まちは動き出すはずです。

− 複数の入口から不動産の面白さを伝える

空き家バンクのウェブサイトにも、デザインが不可欠だと思います。私がディレクターとして企画運営を担当している不動産ポータルサイト「WANDER」は、詳しい説明がなくてもコンセプトが一目で伝わるような見せ方を意識しています。

「WANDER」では他の不動産サイトにはあまり載っていないユニークな物件をはじめ、リノベーション事例や工務店・デザイン事務所、ローカルのおすすめスポットなど「空き家」にまつわるさまざまな情報を紹介しています。それは不動産に興味がなかった人も、「農地と農家の先生付きの物件があるんだ」「同じ趣味の人が集まる物件に住んだら楽しいだろうな」と、暮らしの選択肢を広げてもらいたいからです。

自治体が運営する空き家バンクのサイトの多くは、物件紹介が中心ですよね。けれど、不動産に潜在的に興味がある人というのは、移住したくて家を探している人だけではないはずです。例えばDIYが好きな人、暮らしに興味がある人、何か事業を始めたい人などもターゲットになり得ます。

従来の物件情報に加えて「工務店・リノベーション情報」や「暮らしのレポート」「事業への活用事例」など入口を複数設けることで、これまでより幅広い人がサイトを訪れるようになります。そして、どの入口から流入したとしても、サイトの閲覧を通じて「不動産って面白いんだな」と感じてもらい、見終わったとき、つまり出口から帰るときには「まちを元気にすることは、自分の商売や暮らしを豊かにすることなんだ」という社会的意義に共感してもらう。そうすれば、まちで空き物件を見る目が変わってくると思うんですよね。

入口が複数あると、どこからの流入数が多いか分析することもできるので、サイトの改善にも役立ちます。エリアマネジメント同じで、サイトを一つのまちに見立てて葉脈を育てていくことが、これからの空き家バンクに必要ではないかと思います。

不動産ポータルサイト「WANDER」

− 「まちを変える人」を増やしてゆくには?

エリアマネジメントのプレイヤーになりたい人へのメッセージは、とてもシンプルです。
「やりたいことがあれば、まず動いてみよう」。

私が大切にしているのが「インナー/ホーム/アウター」の理論です。インナーは実践者としてすでにその場所で活動している人、ホームはそのまちに関心があるが活動はしていない人、アウターはまちの魅力に気付いていない、または関心のない人と位置づけしています。

まず働きかけるべきはインナーとホームです。彼らのやりたいことや、まちに求めることを表現していくうちに、アウターの中にも興味を持ってくれる人が生まれるはずです。不特定多数ではなく、自分たちが訪れてほしい・移住してほしいターゲット層へ確実に届けることが大切です。

やりたいけど行動に移せていない人には、「移住してこんな風に楽しんでいるよ」「地方でこんなお店を開いたよ」など、事例を見せてあげるのが効果的だと思います。たくさんの成功事例を多く示すことで、「よし、やるか!」と自ら立ち上がる助けになります。

− 目指すのは、暮らす人の日常を豊かにすること

「WANDER」が設定しているゴールは、暮らすための家を探している人が、ビル1棟まるごと売りに出されているのを見て、そうしたビルを購入して住みながら収益化できることを知り、実際にやってみる…という流れを作り出すこと。その人が上手くいけば、きっと他の人にも「こんなやり方があるよ」と教えてくれるはず。行政も、このようにチャレンジや共感を拡散できる仕組みを用意するといいのかなと思います。

重く受け止めてもらう必要はありません。「やってみようかな。ダメなら帰ってくればいい」くらいのテンションで始めて、「気付いたらビルオーナーになっていました!」となるような、軽やかな挑戦をサポートすることが、プレイヤーを増やすことにつながるのではないでしょうか。

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