“好き”を仕事に

Interview

東京都→広島県江田島市

蛇草孝介さん

#DIY#リフォーム・リノベ可能#古民家#島暮らし#海が近い

地方が抱える課題解決の一助に。空き家に付加価値を与え、地域活性化のモデルケースをつくりたい。

大学を卒業すると同時に広島から東京へ。空間デザインの仕事に携わって15年、もっと自由に働きたいとの思いから、地域おこし協力隊に応募して江田島に移住されたのだそうです。空き家活用ディレクターとしての活動をはじめ、空き家利活用の新しいモデルづくりに取り組む思いをお話しいただきました。

—— 移住のきっかけから教えてください。

元々は広島出身で大学卒業から10年以上東京で暮らしていました。広島の大学に通う中、長期休暇の度に東京で住み込みアルバイトをしたことがきっかけで、インテリア関係に興味を持つようになりました。卒業後、東京の専門学校でデザインについて学び直し、店舗やオフィスのデザイン設計事務所に就職。それから15年、東京で働いてきました。

仕事にはやりがいを感じていましたが、次第に家と職場を往復するだけの毎日に疑問を持つように。ぼんやりと「移住したい、40歳までにどこかに行きたい」と思うようになりました。そんなとき、コロナが流行。働き方も変化してオンラインでも仕事ができることが実証され、私も「もっと自由に働きたい」という希望が明確になり、移住に向けて本格的に動くことにしたんです。

—— どのようにして移住先を決めたのでしょうか。

まず、東京の有楽町にある「ふるさと回帰支援センター」に行きました。そこに行く前は、移住先として宮崎や福岡の糸島とかが頭に浮かんでいて、広島は全く考えていませんでした。たまたま予約もせずセンターに行った私を、「どうぞ!」と歓迎してくれたのが広島の担当者さんだったんです(笑)そこで紹介されたのが「江田島」でした。

広島市は東京と比べると小規模な街ですが、それなりの都市です。広島市の近くだと田舎暮らしとはいえないんじゃないかと感じていました。でも江田島は、広島からフェリーで30分の距離なのに、都会とは違うおだやかな空気を感じられる場所でした。

移住サポートセンター「フウド」の後藤さんや市役所の方々とお話をして、江田島は“これから”動き出そうとしている町だと実感。移住するならここがいいなという印象を持ったんですが、仕事をどうしようか迷っていました。そんなとき、空き家活用に携わる地域おこし協力隊の募集があることを市役所の方からご連絡いただいたんです。妻に相談したら「採用になったら移住してもいい」という返事をもらったので応募を。試験を受けて見事採用となったので、移住することに決めました。

—— 地域おこし協力隊としてどんな活動をされましたか。

着任してすぐ、空き家の状況把握に努めました。2か月かけて島内を見て回り、約1,800戸も空き家があることがわかったんです。

すぐに住めそうなものもたくさんありましたが、所有者の方々が「お墓がある」「代々所有してきたものだから」など、さまざまな理由で売りに出さず、貸し出しもせずにいることもわかりました。

家は、空き家期間が長くなるほど傷んでいきます。所有者の中には活用できることをわかっていない方がいるのでは?と考え、まずは情報を届けるため、すぐ利活用できそうな住宅にチラシをポスティングして回りました。これを2回繰り返したころ、空き家バンクの登録がかなり増えました。VRの導入など江田島市の取り組みの認知も進み、移住先として江田島が注目され始めたことを実感しています。

—— ご自身で手掛けられた空き家利活用について教えてください。

切串港から近くて広いこの物件に巡り合ったことで、自分で利活用のモデルケースをつくろうと思い立ちました。最初は、漠然とテナントにしようと思っていたんです。

 

それから3か月後、広島県の事業のクラウドファンディングに挑戦。正直これが大変でした(笑)着任して1年たたないうちに行動したので、知人や活動の理解者があまりいなくて情報の伝達にかなり苦戦しました。私財を投じて購入して「やる」と公言したことでいい意味で逃げられず・・・。なんとかプロジェクトを進め、結果、多くの方にご支援いただき170万円集まりました。本当によく集まったと思います。感謝しかありません。

このクラウドファンディングの活動を通して、周囲のニーズや自分の思いが明確になり、島の中と外がつながる交流の拠点“HUB SPOT”をつくろうと決めました。

—— 改修のポイントを教えてください。

もともとこの物件は、状態がよかったので内装費用はそんなにかかってないんですよ。部材やインテリアをそろえるときは、前職のノウハウをフル活用しました(笑)

コワーキングスペースに利用している部屋の床は、廿日市市の木製品製造メーカー「WOODPRO」さんの協力のもと、DIYイベントを開催して張り直し、ウッドデッキも作ることができました。DIYイベント以外も知り合いのみんなが協力してくれ、10人ぐらいが集まって、床だけでなく、トイレの壁に漆喰も塗って。解体で出たゴミも自分たちで片づけたんですが、これまた量が多くて大変でした(笑)

使える廃材は再利用して、カフェっぽいカウンターをつくりました。照明、テーブル、チェアなどは、気に入ったものを1点1点こだわって集めています。

玄関横にあった庭は、外と中を緩やかにつなげられるよう、石灯篭と松の木を残してウッドデッキをつくりました。

意外とコストがかかったのが下水道工事ですね。配管を公道からつなげるのが大変でした。

 

—— 具体的にはどのように利用されているのでしょうか。

平日は主に1Fのメインスペースはコワーキングスペースとして利用しています。

土日はキッチン・マルシェなどのイベントを行っています。その他のテナント区画はそれぞれ曜日に合わせて営業しています。

ここはイベントや打ち合わせでの貸し切りも可能。飲食販売を伴うイベントに使えるよう、キッチンは飲食店営業許可を取っています。

2階には「ビューティースタジオ・AReey」さん、離れには「自転車工房MASA」さんがテナントとして入っています。

今後、2階の空き部屋や、離れの空きスペースにもショップができる予定です。

—— これから着手されたいことは何でしょうか。

この切串エリアは、広島市からフェリーに乗ると30分で来ることができるアクセスのよい場所です。ただ現状を見ると、飲食店も少なく、サイクリストが遊びに来ても立ち寄る場所が少ないのではと感じています。Kirikushi Coastal Villageが一つのきっかけとなり、飲食店が増えるなど賑わいが出て、切串エリアが面白くなっていったら成功だと思いますね。

Kirikushi Coastal Village自体も流動的に、どんどん進化させていきたいです。アクティビティを増やしたり、規模を拡大させたり。この物件内にもまだ空きスペースがありますし、近隣の空き家を購入してゲストハウスをはじめてもいいかなと考えています。

また、Kirikushi Coastal Villageを見て、「うちの家も使って」といった声も出てきています。現在手一杯なので自分で手掛けることはできませんが、「やってみたい」と手を挙げた人に紹介したり、リフォームのアドバイスをしたりできたらうれしいですね。

—— 移住を希望されている方々にメッセージをお願いします。

その土地、その土地に、文化があり、個性があると思います。

空き家を見つけて移住するのもいいですが、その土地との相性を調べるために、まずは借家を借りて、暮らしてみるのはいかがでしょうか。

田舎はご近所付き合いが、都会よりも深いのが特徴です。また、行ってみて気付くこともあります。家が欲しいといえば、口コミで広がって空き家情報が舞い込んでくるケースも少なくないですよ。

私は、移住前に地域の方と相談できる関係になっておいてよかったなと実感しています。これから移住をしたいと思っているみなさんにも、相談できる人とのつながりをまずつくって、移住、空き家探しをすることをおすすめしたいですね。

蛇草さんが経営されている「kirikushi coastal village」の公式ホームページはコチラから!

https://kirikushi-coastal-village.studio.site/