仕事も暮らしも
”自分”次第

Interview

大阪府→広島県安芸太田町

岡本さんご夫妻

#家庭菜園#移住

「通勤で消耗する」生活を変えるため移住を決断。広島市の中心街から車で1時間の距離は、 初めて田舎暮らしをする私たちにぴったりでした。

都会の方に田舎暮らしを始めたい理由を質問すると、「働き方や暮らし方を変えたい」を挙げられることがあります。移住して1年になる先輩移住者の岡本さんは、自然に囲まれた生活に憧れて移住を決意。移住前と働き方や暮らし方を変えて、マイペースで充実した毎日を過ごされています。

—— 移住をしようと決断したきっかけを教えてください。

私たちは大阪で毎日、通勤に往復4時間、朝6時30分に家を出て、夜の9時ごろに戻るという生活を送っていました。都会は通勤時間に人身事故が多く、電車が止まることもしばしば。帰りも遅くなり、二人とも疲弊していました。人の多さがしんどかったのだと思います。

そこで、二人が仕事を辞めたことを機に、以前から漠然と考えていた移住を決意。しっかり話し合いながら、集中して移住先を決めることにしました。仕事も、お勤めではなく、もともと趣味として行っていたHP制作を生業とすることに。結果、決断から2か月で移住できました。今考えると、先に仕事を辞めたことで、自由に動けたことがよかったのだと感じています。

 

—— 安芸太田町を選んだ決め手は何ですか?

私たちはもともと広島と直接の関わりはなく、観光で市内等を訪れたことがあった程度でした。

当初、関西圏だとこれまでの生活と代わり映えがしないので、関西圏を除いて全国の空き家から物件を探し始めました。そこから、雪があまり降らない西日本、さらに、岡山、島根、広島にと徐々に限定していきました。

最終的には、大阪の実家に帰ることを考えて新幹線へのアクセスが便利なこと、観光で行ったときに思った「ほどよい都会感」にも魅力を感じた広島に絞りました。

広島県の中でも西エリアに絞ったのは、自然に囲まれながらも広島駅(市街地)まで、遠すぎない立地だったからです。田舎への憧れはありましたが、ポツンと一軒家は厳しいと感じていたので、周辺の環境やアクセス面は重視しました。

安芸太田町以外では、北広島町、三次の補助金などの制度もしっかり検索しました。補助金が手厚いところはとても魅力的でしたが、やはり住むところがあるかどうかが重要でしたね。私たちは、いきなり知らない土地で数百万円の家を購入することは現実的でないと感じていたため、まずは住んでみてから決めようと思い「賃貸物件」で探していました。

—— 空き家はどのようにして探されましたか?

・賃貸の価格(5万円前後)

・補助金

・すぐに住める(水回り重視)

・農地付き

・ペット可(3匹の猫と暮らしたい)

・戸建て

 

を条件に、物件探しをはじめました。

民間の不動産情報は検索せず、当初から空き家バンクで検索。物件情報に加えて移住のブログ、SNS、自治体のインタビュー記事で情報収集を行いました。すぐに住める物件を探していたので、家財が残っていたり、水回りの改修等が必要な物件も検討対象から除外しました。そこで安芸太田町に気になる物件があったので、メールで問い合わせました。すると担当者さんから折り返しお電話をいただき、スムーズに内覧が決まりました。

内覧したのは、今暮らしている住宅含めて2軒です。

今の家は築140年、15年程度空き家だった物件でしたが、水回りもリフォームされた物件でした。庭師さんが、定期的に空気の入れ替え等を行っていたため、すぐに住める状態だったのも魅力的でした。

本当は、今の物件は売買物件だったので予定していませんでした。でも、町の担当者さんから「一度見てみませんか」といわれて見学することに。もう1軒と比べて日当たりも良く、農地も付いており、こちらの物件がよかったのでその旨を伝えると、所有者さんへ掛け合ってくださいました。

最終的には,賃貸も可能になり、こちらの物件に決定したんです。町の担当者さんが動いてくださったおかげで、早く理想の物件と巡り合えて、本当によかったです。

—— 大阪と広島県安芸太田町での働き方の違いを教えてください

大阪では、機械設計(夫)、商社営業(妻) として働いていました。現在は、ウェブ制作(夫)、ウェブライター(妻)です。

こちらに来て見つけたのが、広島観光連盟の活動です。戸河内に行ったとき、道の駅に貼られていたポスターを見て応募し、観光大使として宮島や世羅町、尾道のPRに携わりました。

基本、在宅で仕事をしています。平日5日、夕方5時ぐらいまで稼働していますが、それにこだわらず、忙しくないときはゆったり休憩するなど、マイペースに働いています。

今の仕事に変えて不安や不満に感じたことは何もありません。強いて言うならば、出勤がなくなったので、運動不足がちなこと。電車を使って通勤していたので、駅まで歩いたり、電車の中で2時間立ちっぱなしだったり、意外と体力を使っていたのだなと改めて思います。

前職と関係のない仕事を始めたことで「食べていくことに不安はなかった?」と質問されることもありますが、正直「なんとかなる」と考えていたので全く不安はありませんでした(笑)

—— 田舎暮らしはいかがでしょうか。

この物件にした安心材料の一つに、ご近所に関西の先輩移住者が住まれていて、ウェルカムな雰囲気の地域だったこともあります。実際、とても親しくしていただいています。

昨年のクリスマスには、新幹線で尾道にプチ旅行。一緒に尾道ラーメンを完食しました。30代の私たちからすると祖父母のような70代、80代の友人と出かけるとは、大阪で暮らしていたときでは想像できない出来事ですね。

また、ご近所さんに教えていただきながら、憧れだった家庭菜園にも取り組んでいます。

私たちが鶏糞、牛糞、石灰、樹皮などの言葉の意味から分からないぐらいの初心者のため、地域の方々がいろいろと気にかけてくれます。「畑に植えておいたよ」と事後報告で玉ねぎを植えてもらったり、夏に雑草をそのままにしておいたら食べられる野菜と廃棄する野菜を仕分けしていただいたり、とても手厚いので驚きました(笑)

また、オクラは背が高く、かぼちゃは横に広がって成長することなど、育ててみて初めて分かることばかり。トマトは消費しきれないほどたくさん作りすぎたので、今年は少し減らして、さつまいもにチャレンジしたいと思います。

実際に家庭菜園を始めてみて、季節で収穫できる野菜が限られることなど実感し、自給自足は簡単ではないことがよくわかりました。

季節の野菜は、日曜日に地域の集会所で開かれる朝市で購入することもできます。野菜以外にも天体望遠鏡や服などいろんなものが並んで、ガレージセールのようで楽しいですよ。

—— 1年暮らしてみて、いかがですか。

思ったよりも冬が寒く、雪が積もることがわかりました。

家の前の道路まで除雪されるので不便はありませんが、古民家は断熱性が低いのか、単に広いせいなのか、温めても一部屋だけ温もる感じですね。以前はマンションに住んでいたので、1か所温めたら家の中がほんのりあったかい感じでした。今は、部屋から廊下、トイレ、キッチンに移動するとすごく寒いです。まあ冬は寒いものなので、1年の3か月くらいが寒いものと受け入れ、季節を肌で感じながら暮らしていくのだなと思っています。

夏はエアコンをあまり使いませんが、暑いことは暑いです。その暑さよりも、虫の多さに頭を悩ませています。あと、雑草の成長力にもびっくりしました。梅雨が明けたと同時にぐんぐん伸びて。これまで長靴も持っていませんでしたが、草刈り機まで購入して、雑草と格闘しています。

一番困ったのが、ネット回線工事ですね。入居前からネット開通に時間がかかるとは教えてもらっていましたが、申し込みをして6か月経っても日程が決まらなかったので、結局キャンセルしました。電気店で相談するとコンセントにさすだけのものがつながるエリアだったので、そちらを購入。早く知っていたらよかったな~と思っています。

 

入居前は,リフォームしてもいいかなと思っていましたが,特に不便も感じず,1年間過ごすことができました。テレビアンテナがなかったので,テレビもいれてないですが,ネットがあれば十分生活できると感じています。

ここは,移動図書館を利用できるのもいいですね。欲しい本をすぐに買ってもらえたり,人気の本も比較的早く読めたり,とても便利です。

—— これからの希望を教えてください。

引っ越してきて感じているのが、私たちがダントツに若いということです。

ご近所の方々は、50代~70代が中心。地域にもう少し若い人が入ってきて欲しいですね。

10年20年たったらどうなるのだろう、と少し心配しています。

私は仕事で移住・ワーケーションを行っている会社のコラムの執筆に携わっていますので、仕事を通して移住者を増やしていくことをお手伝いできたらいいな、と考えています。

—— これから移住したいと思っている方にアドバイスをお願いします。

家の改修だけでなく、車の購入や引っ越し代などなど、移住をしようとすると、まとまったお金がかかります。移住前に、プロパンガスや水道代が「高い」という情報をネットで見つけて知っていましたが、事前に生活費のシミュレーションした中に含まれていない出費も結構ありました。ムカデ、アリなどの虫対策や、ストーブやエアコン、スタッドレスタイヤといった冬対策は、思った以上にかかります。浄化槽の点検費用が結構かかるとは知らなかったですね。

とはいえ、家賃をこれまでの半額以下に抑えられたので、ガソリン代等のコストアップを除いても大阪よりも生活費はかかっていないと感じています。

移住に憧れる人は、古民家や家庭菜園に対してキラキラしたイメージを持たれている人もいます。先輩移住者として「実は大変な面もある」ということを伝え、来る前にギャップを埋められるよう努めたいと考えています。

私たちは、メガバンクのATMがなかったり、ごみの仕分けが細かいことにも驚いたり、不便さを感じたりしたこともあります。それでも、地域の方々との繋がり、安心感、景色や空気の気持ちよさは、都会にはない豊かさで、生活に不満を感じたことはありません。こうしたポジティブな面と、少しネガティブな面の両方を正直に広めていきたいですね。