埼玉県→広島県廿日市市
金澤さんご家族
良い空き家物件との出会いで、理想の暮らし&働き方が実現。地域の仲間とともに、新しい拠点づくりにも挑戦しています。
埼玉県から廿日市市に移住した金澤さんご家族。子育てと仕事のバランスを考慮して二拠点生活を前提にスタートした新しい暮らしは、コロナ禍を経て、暮らし方も働き方もより今に合う形に変わってきているといいます。移住の経緯や魅力、住まいづくりについてお尋ねしました。
長男を出産した頃から、落ち着いて子育てができる環境に引っ越したいと考えるようになりました。小学3年生になるまでに移住しようと夫婦で決めて、私の実家がある広島県内を想定して移住先を検討。夫婦ともに建築関係の仕事をしていて、移住後も関東での仕事を続けるつもりだったので、二拠点生活という形で考えていました。
実は、最初は島暮らしがしたかったんですよ。夫婦ともに釣りが好きで、埼玉県で暮らしているときも休日は釣りに行っていたんです。ただ埼玉は海なし県なので、釣りに行くとなると一大イベント。島暮らしならすぐ釣りができるよね、という気持ちからでした(笑)。でも島だと関東への行き来がしにくいこと、実家が広島市内にありせっかく移住するなら離れる必要もないかなと思ったことから、実家から1時間圏内のエリアを目安に探すようになりました。
場所探しで重視したのは、小学校についてです。長男の希望も聞きながら、複式学級ではなく各学年1クラスくらいの小学校を希望していました。東京にある広島移住のサポートセンターを活用しながら、通学方法が歩きなのかバスなのか、時間はどれくらいかかるのかなどより詳しい情報も調べました。
同時に空き家バンクを活用して物件探しも行いました。ただ、行きたい小学校と住みたい物件とが良い塩梅で見つかることはそんなに多くなく、この点は苦労しましたね。実家へ帰省するたびに各地域の小学校や空き家物件を見に行くということを数年繰り返し、小学校と物件、町の雰囲気や関東への移動のしやすさを考慮して、最終的に廿日市市の佐伯エリアにたどり着きました。
移住先を広島県内に絞ったタイミングから『みんと。』を活用するようになり、廿日市エリアに条件を絞って物件を探しました。気になる物件を見つけたら、その校区にある小学校との距離感や通学路の環境など、現地の人でしか分からない部分の問い合わせもしたりしました。
物件に関しては、母屋のほかに倉庫と畑が付いた空き家を探していたんです。ただ理想通りの物件はなかなかなくて粘っていたら、希望に近い物件が『みんと。』に登録され、市の担当課から「良い物件が出ましたよ」と連絡をいただいて。すぐに内見して契約して…と即決でした。倉庫と畑が付いているだけじゃなく、母屋の家具がすでに片づけられていて改修や引っ越しがしやすい状態だったのも決め手です。長男が小学3年生になる2019年の春から、この家で暮らすことができました。
住むための大きな改修としては、母屋のお風呂場や洗面台、トイレなどの水回りを行いました。契約から引っ越しまでの期間は廿日市へ来れなかったので、地域のリフォーム店に依頼して水回りの床を下地まで整えてもらったり、洗面台が土間に埋まっていたので上げてもらったり、お風呂にユニットバスを設置してもらったりと、最低限住める状態まで改修していただきました。
水回り以外は、引っ越し後に自分たちで改修しました。リビングは、床を無垢材のフローリングに変えています。この物件に決めたときに薪ストーブも設置したいと思ったので、契約後にそのまま廿日市市内の販売店へ行って薪ストーブを購入。リビングの床を貼り終えてから、ストーブを納品していただいて自分たちで下地をつくりながらのんびり工事していきました。朝焚くと部屋が一日中暖かく保たれるので、冬場はもう欠かせません。
廿日市市の中でも山側なので不便そうに思われることもありますが、今暮らしている場所は旧佐伯町で考えると中心部に当たるエリアです。だからスーパーや銀行、郵便局、病院など生活に必要な主要施設は車で移動圏内にあり、実際のところ困ることがありません。「以前暮らしていた埼玉よりも便利だね」と夫婦で話すこともあるくらいなんですよ。移住した当時はなかったコンビニも、今では家から割と近くにできているのでより便利になりました。畑では夫が念願だった野菜づくりを楽しんでいます。本当に良い場所で良い物件に出会えたと思いますね。
子どもの通学環境を考えても、今通っている小学校は徒歩圏内で、中学は自転車通学、高校も近くにあり、次男が通う保育園も近いので良かったなと思っています。今では長男は放課後に友達と川へ行ったりと自然の中が遊び場になっていて、埼玉ではなかなかできなかったことが経験できているんじゃないかなと感じています。
二人とも移住先でゼロから仕事を探すことは考えておらず、関東と行き来しながら仕事を続ける形をイメージしていました。夫の場合は、どうすれば移住先でも遠隔で仕事ができるのかを模索しながら、少しずつ調整と準備を重ねていたようです。それはコロナ禍以前のことなので、今思えばだいぶん先を見据えていたなと思います。
私は左官職人をしています。仕事の比重は関東で、左官をするときは都度関東に行っていたのですが、移住後に縁あって廿日市の職人さんを紹介してもらい、広島でも左官の仕事ができたことは恵まれていたと思います。倉庫は左官の工房として自分で自由に改修したのですが、ここではモルタルを使ったアクセサリーづくりなどのワークショップを開催しています。倉庫の外にはウッドデッキをつくり、1年ごとに材木を張り替えるワークショップもしているんですよ。このウッドデッキで知り合いがキャンプしたり地域の方が遊びに来てくれたりするので、私も左官でピザ窯をつくって食べたり飲んだりとみんなで楽しんでいます。
埼玉では商店街の中に事務所を構えて地域おこしのような活動もやっていましたので、広島でもそれに近い活動がしたいと考えていました。同じ考えを持つ同世代の人とのつながりができ、今はその仲間と一緒に地域内外や多世代の交流をつくるコミュニティースペース『ナガスタ』の運営を始めています。移住してから地域の方をはじめいろんな人に縁をつないでもらって、左官業以外の新しいチャレンジにも挑戦することができています。
※『ナガスタ』とは…空き店舗や空き地が目立つ廿日市市佐伯区津田商店街で、地域の人たちのにぎわいの拠点として2021年3月にオープンした施設。かつては、津田の住民にとって生活の一部であったスーパーマーケット「ナガタストアー」の空き店舗を、地域住民の方々の手で「ナガスタ」として名前を改め、復活させました。
二拠点生活を前提に始めた移住生活でしたが、コロナ禍の影響もあり今では仕事も暮らしも廿日市がベースになり、左官もナガスタの運営も、子育ても、改めて腰を据えてできています。移住にあたって不安がなかったわけではありませんでしたが、特に気になっていた小学校の情報などは問合せできるところに全部聞いていました。また移住経験者や希望する地域で実際に暮らしている人のリアルな声を聞くとより具体的にイメージしやすくなるので、相談窓口や市町の担当課を積極的に頼ることをおすすめします。
金澤さんが経営されている「marumo工房」の公式ホームページはコチラから!