群馬県→広島県安芸高田市
田中陽可さん 奈織さん ご夫妻
やってみないと始まらない。 新しい環境でも夫婦力を 合わせて、自然農法を成功させたい。
地震や台風、集中豪雨と近年、自然災害が多くなっています。こうした天災をきっかけに、都会暮らしを見直して田舎で生活したいと考える人も増えたと聞きます。中でも、農業に興味を持つ若い人は増加傾向とのこと。安芸高田市にお住いの田中さんは、群馬から移住してきた農家さん。移住先をどのようにして探し暮らし始めたのか、また農業に対する熱い思いなどを語っていただきました。
私はもともと東京都の出身です。20歳のとき農業をしたいと思い、群馬県に移り住み、地域おこし協力隊として働きました。任期を終えたあと新規就農へ。3年間、畑を借りて農業をしてきました。妻は広島でNPOの職員として働いており、学童保育主任として平和教育の企画運営をしたり忙しい毎日を過ごしていました。
結婚を機に、妻の出身地の広島に移住することを決意したんです。
「よく決断されましたね」と言われますが、確かに容易い決断ではありませんでした。群馬では、農業法人に勤めていたわけではなく、自分で農地を借りて野菜を育てていたので、それをリセットするのは断腸の思いでした。
とはいえ、二人で話し合って決めたことです。一歩一歩準備を進め、妻と一緒に移住先を探しました。
群馬にいながらの物件探しだったので、まずはネットを通して探しました。安芸太田町や廿日市市、尾道市や三次市と、最初は県内全体を候補としていましたが、妻の活動を考慮して広島市内に1時間圏内の地域に絞って検索を。私の希望として山に近い場所で農業をしたいと考えていましたので、おのずと絞られていきました。
何軒か足を運んで見学しましたが、なかなかここだという決断には至りませんでした。そんな中、妻の知り合いから売却しようとしている物件があると紹介してもらったのが、安芸高田市のこの家でした。
家族が暮らしていくのに広さが適当で、近くに農地がある場所だったことがポイントになりました。
そして何より離れがあるところにも惹かれました。
私たちは将来的に、農業を経験したいという方に食事や宿泊場所を提供する農泊を考えていて、提供するホストと体験したい人をつなぐWWOOF(ウーフ)にも登録したいと思っています。そのため、プライベートを確保できる離れがあることはとても魅力的でした。
また、家の裏手に線路が走っているところは面白いなと思いました。窓を開けたら線路が見えるって珍しいですよね(笑)。アクセス面でJRの沿線に住みたいと考えていましたが、線路沿いとは想像していませんでした。
このエリアは田んぼが多く、畑があまりなかったところですね。 今は、農作放棄地を借りてサツマイモの栽培をしています。群馬では畑を借りての栽培だったので、これは一つのチャレンジです。これまで農薬を使わない自然農法にこだわって栽培してきましたので、ここでも自然農法を実践し4~5年ぐらい長い目で見て畑を作っていけたらいいなと考えています。
また、将来子育てをすると考えたとき、産婦人科がないところは少し心配なところです。教育面は小学校から高校までありますし、広島市内へのアクセスも便利な場所なので、のびのび育てられると思っています。
私たちが移住するまで持ち主の方が暮らしていらっしゃったので、トイレやお風呂は修理されていて、大きな工事の必要はありませんでした。
手を入れたのは、離れの縁側、キッチン。畳表替えもしました。
中でもキッチンは、調理器具を置くスペースを確保するように、造作棚を設けました。流し台も広く確保しましたので、使いやすくて便利です。
入居後に地域の先輩移住者さんに、畳は新しくしてから2年ぐらいはカビが生えるから気を付けるようにアドバイスをいただきました。私たちは入居前に母屋の畳をすべて替えたので、今は毎日カビとの戦いです(苦笑)。戦いといえば、ネズミや虫ともあります。夜になるとネズミが天井をパタパタ走り回るので、妻は目が覚めるようで・・・。私は群馬から慣れているのか熟睡しているので気ならず、都会育ちの妻から「逞しい」と言われます(笑)
物件を探す時点で、自治体の補助制度はしっかり調べていました。安芸高田市は空き家情報バンクに登録された空き家を改修するとき補助金を受けられます。私たちは年齢的にも若かったので子育て世帯として80万円の補助金を交付いただきました。また、空き家を購入したので購入費用も補助いただきました。
安芸高田市の担当者さんはとても親切で、大家さんやリフォーム会社さんとのやり取りもスムーズにご対応いただきました。
空き家を活用するときどのような支援を受けられるか、移住を決める前に調べてみることをおすすめします。
引っ越ししてまだ間がないですが、地域の方々にとてもよくしていただいています。
中でも安芸高田市の農業委員さんにはいろいろ動いていただき感謝しています。2020年3月末に群馬から引っ越してきましたが、4月には畑の賃貸契約が終わり、農作業を始めることができました。
新型コロナの影響でご挨拶もままなりませんが、地域のネットワークは素晴らしく、私たち夫婦のことはしっかり伝わっているようです。
群馬から来た平成生まれの若者ということで、ご年配の方々からは孫のようにかわいがっていただいています。プレッシャーをかけないよう、笑い話を交えながら「地域の次を託したい。向原を頼む」と言っていただいています。期待されることはとてもありがたいことですね。その声に応えられるよう、二人で頑張っていきたいねと話しています。
妻は今、安芸高田市の地域おこし協力隊として働いています。これまで夜も遅い不規則な生活をしていましたが、すっかり朝方になり、自分自身を見つめる時間ができて“暮らすことに集中できる”と喜んでいます。「自分にとって豊かな時間の過ごし方」だそうです。
田舎に住みたいと考えているなら、ぜひ早いうちに始めることをお勧めします。
若いと周囲に助けてもらえる機会も多いですし、何より体力があれば乗り切る気力も引き出すことができます。
そもそも私が農業を始めたのは、世界から飢餓をなくしたいという思いがきっかけです。飢餓で苦しむアフリカから農作物を輸入している現状を知り、日本の自給率をあげたいと考え、アメリカ留学中に化学肥料や農薬を使わない自然農法を学びました。日本に帰国後、22歳の若者がNPOを立ち上げ運営するには説得力が足りないと感じて、自ら経験を積むため群馬に移り住んで農業を始めたんです。
今もその思いは変わりません。自然農法を極めるべく、妻と一緒に頑張っていきたいと考えています。
ここ安芸高田市は、みなさんとても親切で、手厚いサポートも受けられます。農業に限らず、「田舎暮らしをしたい」と思う方は、安芸高田市を候補の一つにぜひ加えてみてください。