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「混沌」がまちの原動力に!
地域を育てる空き家の活かし方

  • 引き継いだ人
    四方 諒さん

    三原市地域おこし協力隊。大阪府出身。三原市内の空き家再生を多数手掛ける。本町では、たこ焼き屋とシェアキッチン兼ゲストハウスを経営。

  • つないだ人
    沖本 洋介さん

    三原市地域企画課 主任。三原市本町出身。空き家バンクの運営・管理や、地域おこし協力隊の募集・サポートなどを行う。

JR三原駅の西口に隣接する本町地区。昭和前期は市内を代表する商店街として大いに栄えましたが、現在では空き店舗も目立ちます。そんな本町地区の活性化に取り組んでいるのが、三原市地域おこし協力隊の四方 諒さん。空き物件をシェアキッチンや宿泊施設に再生することで、まちに新たな人の流れを生み出そうとしています。

今回は空き家バンクの運営を担う三原市役所の沖本さんとともに、目指すまちの姿について語っていただきました。

シェアキッチン「おかって」

四方:城下町である三原市本町は、旧西国街道が通る歴史的なまち。旧西国街道沿いはかつて、活気あふれる商店街だったそうです。そのため、1階の通りに面したスペースが店舗で、1階奥や2階が住居になっている町家が建ち並んでいるのが特徴です。

沖本:私は本町出身なのですが、30年ほど前は文房具屋やおもちゃ屋、病院、銀行などもあって賑やかでした。それが今では空き家も増え、解体して駐車場になっているケースも少なくありません。

四方:まちづくりを始める際、「食べる場所」と「泊まる場所」があれば、カバン一つでこのまちを訪れてもらえると考えました。まずは飲食拠点を増やそうと、2025年6月に、私と同じ三原市地域おこし協力隊で建築デザイナーの三原一哲さんとともにオープンしたのが、シェアキッチン「おかって」です。築約150年の江戸時代の建物で、10年前までは婦人服店だった場所を再生しました。

キッチンとカウンターを備えたこの場所は、将来お店を持ちたい人のためのチャレンジショップでもあります。現在はスパイスカレー店が間借り営業しています。目指しているのは、ここで集客の練習を積んだ人々が、いずれは本町地区内に出店すること。空き家を主役にするのではなく、まちづくりの一環として空き家を活用するという考え方です。

沖本:2階をゲストハウスとして、2025年度中にオープンする予定なんですよね。

四方:はい。1階は賑わいを生むオープンスペースとし、2階の宿泊施設で収益を上げるモデルです。店舗向けの空き物件が多く残る本町だからこそ、可能な取り組みだと考えています。
本町の町家は、間口が狭く奥行きが長いという点では京都などに似ていますが、特徴的なのは、通りから奥へ向かってゆるやかな上りになっているところ。通りの裏(北側)に山が迫っているためです。そんな地形の面白さを、三原さんが空間デザインに落とし込んでくれました。テーブルはオールフラットですが、座る椅子の位置が奥に行くにつれて高くなっているんですよ。

沖本:内装もおしゃれですし、看板のデザインも可愛らしくて目を惹きます。

四方:ありがとうございます。まちづくりにおいて、デザイナーの存在は欠かせないと考えています。内装だけでなく、ロゴや看板など「人の目に触れる部分」にこだわることで、まずは興味を持ってもらい、実際に足を運ぶきっかけを作りたいんです。ビジュアルデザインは市内のデザインユニット「パンパカンパニ」さんにお願いしています。建築やグラフィックなど、各分野のデザイナーが身近にいる点も三原の強みだと感じています。

物件を借りた経緯

四方:「おかって」の物件とは、本町地区の住民で構成される「西国街道本町地区まちづくり協議会」のつながりで出会いました。私や三原さん、「おかって」の家主さんは協議会のメンバーなんです。まちづくりへの思いを家主さんに伝えると、「地域活性化のためなら」と快く貸してくださいました。「どうリノベーションしてもいい。使い方も自由にしてくれて構わない」と言っていただき、本当にありがたかったですね。

沖本:地域企画課でも本町地区に空き家を持っている方々から相談を受けるのですが、譲り渡す相手は、昔から地域に住んでいた人や、町内会・組合の活動に参加してくれる人を希望する傾向にあります。四方さんたちは協議会にも参加してくださっていますし、地域にコミットしてくれる安心感があるのではないかと思います。

四方:おかげさまで、現在は本町地区で「おかって」、たこ焼き屋の「たこくん」、そして現在リノベーション中の元・人形展示場の3物件を、それぞれ別のオーナーさんからお借りしています。

三原に移住した理由と、住んでみて感じる魅力

四方:私は大阪出身で、福岡や関東を経て三原に移住しました。地域おこし協力隊として移住したいという思いがまずあって、空き家活用やまちづくりのミッションで募集している自治体をすべてチェックしていたんです。

いくつか候補地がある中で三原に決めた理由は二つあります。一つは、もともと城下町が好きで、歴史深い旧道があるまちを活性化させたいと考えていたこと。もう一つは、「株式会社まちづくり三原」など地域に密着した中小企業が複数あり、個人事業主も参入しやすそうだと感じたからです。

沖本:本町地区は四方さんにとって理想的なまちだったんですね。実際に住んでみて、どうですか?

四方:率直な感想を言うと、「当たりだ!」と思いました(笑)。三原の人は、良い意味でドライ。干渉しすぎないけれど、新しいことにチャレンジする移住者をすごく応援してくれるんです。2023年に本町の空き家を改装して「たこくん」をオープンしたときも、地域の方々がLINEで拡散してくれたり、たこ焼きを買いに来てくれたりと、温かく受け入れてくださいました。

「つかず離れず」の都会的な感覚と、「地元を盛り上げたい!」という郷土愛が共存しているまちだなと感じています。「やっさ祭り」や「三原神明市」といった歴史ある行事が根付いているからか、イベントをやってみたい人の背中を押す土壌がある。「できるときに、できることを手伝ってくれるだけでもOK」という柔軟さがあり、移住者も溶け込みやすいと思います。

本町で広がる空き家活用

沖本:四方さんは2023年に地域おこし協力隊に就任して以来、市内で約10件もの空き家再生に携わってくださいましたね。宿泊施設や飲食店、ワークショップスペースなどに生まれ変わりました。

四方:まちづくりに大工の経験を役立てることができてうれしいです。今は「おかって」の2階を整えながら、4軒隣にある人形屋さんの展示場だった物件をリノベーションしています。ここはカフェバーとしての営業を予定しています。ちょうど三原市役所に設置されていたストリートピアノの行き先を探していると聞き、こちらで引き取らせてもらうことにしました。

沖本:実は三原は、音楽も盛んなまちなんですよね。市内のライブハウスや音楽ホール、飲食店などで生演奏を聴ける機会がたくさんあります。

四方:演奏家として活動している人も多く、私が「今度開業する店にグランドピアノを置こうと考えている」と話しただけで「演奏させて」と出演依頼が届くんです(笑)。この場所を通じて、本町地区に新たな交流やコミュニティが生まれるといいなと思っています。

サポート制度について

沖本:三原でも人口減少が進み、空き家が出てくることは避けられないのが実情です。だからこそ、多くの方に有効活用してもらえるとありがたいですね。

私たちの課では空き家バンクの運営からマッチングまでを行っており、空き家改修や移住で利用できる補助金についてもご案内しています。表通りに面した外壁などの補修には協議会による「まちなみ補助金」が使えますし、市では市外からの移住者に限り、上限30万円の改修補助や残置物処分の補助も出しています。


四方:
新婚生活の引越し補助などもありますよね。自分に適用される制度を「合わせ技」で利用するのがいいと思います。

空き家がまちの活力になっていく事例を積重ねることで、家主さんたちからの信頼も深まっていくと考えます。こうした地道な活動を続ければ、空き家活用の可能性はさらに広がっていくはずです。

三原のこれから

四方:2023年に移住した当時は、まちづくりのプレイヤーが圧倒的に足りていませんでした。しかし、今は、人が人を呼んで層が厚くなったと感じています。2028年には本町の電柱が地中に埋められ、石畳の残る旧西国街道沿いの景色もより美しく変わっていくはず。まちにとって、大きなターニングポイントになると思います。

また、「おかって」もまちの台所として、地域の方々の忘年会や親戚の集まりなどで気軽に使ってもらえたらうれしいですね。まちづくりが特別なことではなく、暮らしのすぐそばにある状態を目指しています。まずは地域に愛される拠点として育てていくことが先決。それから、観光地として市外の方が訪れるまちにしていけたらと思っています。

沖本:四方さんをはじめ、地域おこし協力隊の皆さんがSNSnoteで「三原では今、こんな取り組みをしているよ」と積極的に発信してくださっていることに感謝しています。本町地区でのまちづくりの手法は、きっと他の地域でも参考になると思います。

三原市地域おこし協力隊 note

四方:暮らしとの距離が近く、再現性の高いやり方かなとは思いますね。私がイメージしているまちづくりは「混沌」です。いろんな人や店が風土に合う・合わないに関わらず入ってきて、淘汰されて残ったものが、これからの三原をつくっていく…。自分がおじいちゃんになったとき、そんな風に代謝を繰り返したまちの姿を見てみたいんです。

三原には「カジノをやりたい」なんて突拍子もないアイデアさえ口にできる、自由な雰囲気があります。「ここなら受け入れてもらえるかも」と感じて移住してくれる人が増えたらうれしいですね。

これからも懐の深いまちであってほしいですし、私も市民の一人として、面白い人やモノ、コトをどんどん取り込める地域をつくっていきたいです。

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