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築156年の古民家をリノベーション。
家族で暮らす心地良い住まいとジャム工房

  • 引き継いだ人
    林 真三子さん

    広島市内から三次市三良坂町へ移住。2人の子どもと一緒に田舎暮らしを楽しみつつ、素材の良さを生かしたジャムを作る『糸 おやつのおみせ』を営む。「世界マーマレードアワード」日本大会4年連続受賞、英国大会3年連続受賞。

  • つないだ人
    柄 ひろえさん

    2019年にスペインから三次市へ移住。空き家バンク担当者として所有者による物件登録や購入・貸借希望者のサポートを行い、市外から訪れる人が“その人らしく”暮らせるよう支援している。

  • 託した人
    末廣 真也さん

    三次市三良坂町出身。現在は広島市在住で、高齢のため実家の管理が難しくなることを懸念し、大切にしてくれる人に引き継ぎたいと空き家バンクに登録。

広島県の北東部に位置する三次市は、3本の川が合流する盆地特有の豊かな自然と歴史に恵まれたところ。
広島市内から移住した林 真三子さんは、三良坂町の川沿いに建つ築156年の古民家をリノベーションし、住居兼ジャム工房として活用しています。

ひと目見て購入を決めたという物件との出会い、理想を叶えた古民家リノベーション、田舎でのびのびと過ごす子どもたちとの暮らしについて、お話を伺いました。

広島市内から三次市へ移住した経緯

林:以前は広島市内のマンションに住んでいたのですが、ライフステージの変化に伴い、新しい住まいを探すことに。ジャム作りをしているので、小学生の子どもと親子3人で暮らす住居兼工房にできるような物件がいいなと思い、2024年5月頃から探し始め、『みんと。』をはじめいろんなサイトを見て空き家バンクに辿り着きました。

マンションに住んでいたので、最初は新しくて便利なところがいいと考えていました。予算に合わせて中古物件やリノベーション物件も視野に入れて探し出すと、少しずつ古民家に魅力を感じるように。古い家を自分らしくリノベーションして暮らすのもいいかも、と思うようになったんです。

東広島市や三次市などの空き家バンクをリサーチしていると、物件の立地や広さ、価格、築年数など様々で、この中から探すのは大変だな…と不安になりましたが、たまたま三次市のサイトで目に留まったのがこの物件でした。

問い合わせの電話をしてみたらすごく人気で、すでに順番待ち。でも、ここしかない!と思って内見の予約をし、順番がくるように祈っていました。

柄:本当に人気の物件で、実は林さんの前に購入される予定の方がいたんです。ただ、事情があって頓挫してしまい、林さんに内見の順番が回ることになりました。こういう経験をすると、やっぱりタイミングとかご縁って大切だなと実感します。

今回のケースでは空き家バンク担当者としてサポートを行うことはほとんどなく、「空き家バンク改修補助金」と「三次市移住者住宅取得奨励金」という移住者向けの補助金や奨励金制度を紹介させていただきました。

林:7月に予約の電話をして、8月に現地で内見をし、その場で購入を決めました。サイトで見た時から心は決まっていたので、迷いはありませんでした。

内見前に、父と一緒に三良坂をふらりと見て回ったことがあったんです。たまたま三良坂商店街にある『Mirasaka Coffee』に立ち寄った時に、オーナーが地域のことを色々と教えてくださり、「この町はこれからもっと盛り上がっていくから、ぜひ三良坂へ!」と言ってくれたことが印象的でした。

帰り道に車の中からこの家を見て、「あぁ、やっぱりいいな」と思ったのを覚えています。

一目惚れした物件の魅力

林:この物件は母屋と蔵のような離れがあり、生活の場と仕事場が隣り合わせにできる。子どもたちが学校から帰ってきても、私は隣で仕事ができるし、思い描いたライフスタイルにピッタリだなと思いました。マンションと違って、子どもたちがのびのび過ごせそうだなと、親子で過ごす様子を自然と思い浮かべることができたし、実家とのほどよい距離感もいい。

アクセスもしやすく、ジャム工房としても良い印象がイメージできて。川沿いに建つ姿もすてきなので、シンボル的な存在として認知してもらえるだろうと思いました。

空き家バンクのサイトでは360度カメラでバーチャル内覧ができるようになっていたのですが、画像で見ても丁寧に手入れされてきた家なんだろうなというのが伝わりました。

末廣:築150年以上のこの家で私は生まれ育ちました。河川改修に伴って、10メートルほど移動させた曳家(ひきや)です。広島市内で暮らしながら、定期的に草刈りや家の掃除に来ていたのですが、年齢を重ねてきたこともあり、兄弟で意見を出し合って売りに出すことを決めました。

知人から空き家バンクのことを聞いてすぐに登録。3年ごとに更新があると説明を受けたのですが、「3年も待てん。今年中には何とかしたい!」と考えていました。

古い家に良い印象を持ってもらうためにどうすれば良いかを考え、とにかく片付けることにしました。家財道具を処分するため、軽トラをリースして三次市のクリーンセンターに通った回数は68回。廊下にワックスをかけ、障子を全て張り替えました。

柄:三次市空き家情報バンクの登録物件は現在70軒ほどあり、年間20軒以上が売れています。三次市内で住み替える人もたくさんいるので、実際にはさらに多くの物件が動いていますが、何年経っても売れない物件も少なからずあります。

末廣さんからは、大切な家だからこそ次の人にきちんとバトンタッチしたいという熱意を感じましたし、家財道具を処分されるなどすごく努力されていました。本当にきれいに片付けられて、内見の案内をする時に「頼むから、うっかり持ち物などで穴をあけないでね・・」と祈るほどでした(笑)

こだわりを詰め込んだリノベーションについて

林:設計は甲奴町の片山直樹さんにお願いしました。古い家なのでまずは設計図をおこすことから始まったのですが、子どもたちの転校のタイミングに合わせて、新年度が始まる20254月までには引っ越したいというかなりタイトなスケジュールに対応していただきました。

予算との兼ね合いもあるので、家全体ではなくポイントを絞ってリノベーションしました。LDK部分にある150年以上前の梁は、清水寺と同じ構造で作られたそうです。

工事を担当してくれた土屋建材店の柳生さんからは「この梁は見たら出したくなるから見ない方がいい」って言われたんですけど。あまりにも立派で、ひと目見て絶対に出すと即決しました。本当はもっと上まであるのですが、あまり天井が高すぎると寒くなるし、ほどほどの高さで折り合いをつけました。

柳生:当初はわりとスムーズにできると思っていたんですけど、調査で天井を壊してみると、すごい梁があることが分かってしまい…。工期もないし予算も限られているので、この梁を出したいと言われたらどうしよう、嫌だな~と思いました(笑)。

林さんはこだわりが強いので、それに応えるのはけっこう大変でしたね。

林:「林がまた何か言い出した!」と困られたんじゃないかと思います(笑)。

でも、自分や家族が長い時間を過ごす場所なので、心地よく過ごせるようにしたいし、限られた空間や予算の中でも、ちょっと工夫したら良くなるはずだという思いがあって。床の見切りに真鍮を使ったり、キッチンのカウンターをオーダーで作ってもらったり、出来る限りこだわりを詰め込んでもらいました。

「現代では手に入らない良いものを使っていますね」という大工さんの声に後押しされて、柱や建具、鴨居など年月を経たものだけが持つ魅力を生かしているのもポイント。せっかく歴史ある家を譲っていただいたのだから、その意味を大切にしたいと思いました。

柳生:やっぱり古民家なので、工事をしてみないと分からない部分もあります。この家も解体したら鉄骨が出てきて、設計図通りに進めることができませんでした。あえて鉄骨を残して生かすことで、結果的にはかっこよくなったんですけど。

リフォーム、リノベーションだから低予算で済むとは限りません。希望や要望を叶えるためにはある程度の予算と覚悟が必要ですね。

三良坂での新しい暮らし

林:草刈り、虫や獣との戦いは想像以上に大変ですが、住まいも工房もとても快適です。

子どもたちも生活環境の変化を最初は嫌がったのですが、息子は地域のクラブチームで軟式野球を始めました。上級生たちが「いらっしゃーい」って大歓迎してくれて、すごく楽しそう。自分の居場所を見つけられたんじゃないかな。娘は大好きなダンスのスクールに入って、得意なものに取り組めることが自信につながっているみたいです。

親子で走ったり、キャッチボールをしたり、広島市内ではしたことのない遊びを楽しんでいます。雪かきも子どもたちが率先してやってくれて、うれしそうに雪だるまを作ったりしています。

友人たちも居心地が良いみたいで、自然と人が集まる場所になっています。
「私は仕事するけどどうぞー」ってコーヒーを出したら、数時間いることもあります()

末廣:生活スタイルは大きく変化されたでしょうけど、楽しそうに生活されている様子を聞いて、すごく安心しました。私も息子さんの野球に仲間入りさせてもらおうかな(笑)。

この家は親族が集まることが多く、時には20人以上で食事をしたり、泊まったりすることもありました。これからも、人が集まる場所であり続けてほしいなと思います。


林:親も子どもも同世代という世帯が近所に何軒かあり、飲み会をしたり、一緒におでかけをしたり。移住前に訪れた『Mirasaka Coffee』では、私が手がけるジャムを取り扱っていただくようになりました。以前から変わらず続くご縁もあるし、移住をしたからこそ生まれる新たなご縁もあります。

子どもたちと一緒に成長していきたいし、この土地ならではの果物を使ったジャムを作るのも楽しみです。

空き家で出会った
探し手とオーナー
それを繋いだ人のお話。

AKIYA
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