住まいは、自分たちで暮らしやすいように 楽しみながら少しずつ手を加えています。

・ぬまくま民家を大切にする会の紹介で2008年、賃貸で入居
・家賃を安くする分、改修は自己負担で自由にしてよい契約
・住み継がれてきた、空き家期間の短い古民家
・入居後、2階の一部をリフォーム
・障子の貼替えなどできる部分は自分で少しずつ実施

住まいは、自分たちで暮らしやすいように 楽しみながら少しずつ手を加えています。

福山市

【自邸】

転居のきっかけを教えてください。
仕事のためでした。東京の会社から派遣されて来ていたある日、偶然に見つけたのが、NPO法人「ぬまくま民家を大切にする会」のポスターでした。もともと古民家暮らしに憧れがあったので、さっそく問い合わせてみました。すると、住民の方が移動されて4ヵ月しかたっていない古民家が空いていて、とんとん拍子に事が進み、借りて暮らすことに。といっても、半年ぐらいはホテルと半々の暮らし。4ヶ月でも空き家になっていると、虫が出てくるので、くじけたりしながら、掃除や障子の張り替えなど、自分一人でできることはコツコツ時間をかけて作業して転居しました。ちなみに暮らし始めると虫は減少。虫は、「ここは人間の領分だ」とわかると自然といなくなっていくものなんですね。

 

 

この住まいを決めたポイントはどこにありますか?
NPO法人「ぬまくま民家を大切にする会」の紹介で数件見て回りましたが、大きく立派過ぎたり、クルマが入れなかったり・・・。
ここは一人でも手を加えながら暮らせそうな広さで、図書館やスーパー、コンビニが近くにある便利な立地。千葉の街育ちなので、田舎過ぎないことも魅力に感じました。

 

実際に暮らしてみていかがですか?
この住まいは、築90年以上の歴史のある民家です。梁などしっかりしていて、包みこまれるような安心感がありますね。
お気に入りなのが、縁側から眺めるお庭の風景です。立派な松など手入れは大変ですが、やっぱり日本庭園を眺めていると心が安らぎますね。
2階のレトロモダンな書斎もお気に入りのスペースです。入居後、大工さんにリフォームしていただきました。
こうした古民家の内装は、畳や建具が景観の9割を締めています。一見すると古くて「住めないんじゃない?」と思うような住まいでも、畳と建具を替えるだけでグッと美しく変身しますよ。
なかなか時間がつくれないので、こまめにはできませんが、梁や柱は、防虫・防水・防腐効果のある柿渋を塗って手入れをしています。手を加えれば、それに応えてくれる感じがして、古民家は本当に面白いですね。

★柿渋とは、天然の塗料・染料のこと。青い渋柿を絞って発酵させた液体で、かつては暮らしの必需品でした。木材に塗ったり、布や和紙を染めたり、薬用として虫刺されに塗るなどいろんな利用方法があります。黒木さんは「柿渋」という伝統地域産業を再興する立役者として活躍されています。

 

 

 

困ったことやギャップを感じたことはありませんか?
田舎暮らしは、自然と隣り合わせだなと痛感しました。見たことのもなかった虫と遭遇したり、冬の寒さを肌で感じたり。
徐々に手を加えて住みやすく改善しているのですが、生活パターンが都会と変わらない場合、なかなか時間をつくるのが難しいですね。理想は仕事6に対して家のこと4。今の課題は時間をつくることです(笑)
住まいの面では、生活導線が今と昔では違うなとしみじみ感じます。障子やふすまで部屋を分ける昔の造りだと壁が少ないので家具の配置に悩みます。今でもしっくりきていなくて早くどうにかしたいと思っています。また、立派な玄関はありますが出入りはほとんど縁側から。お客さまとも縁側でお話しすることが多いですね。
後は、ご近所づきあいです。社交性がしっかり鍛えられました。野菜をいただいたり、お魚をいただいたり、本当に多くて一人で食べきれない~と思うことも。庭につないで飼っている犬の面倒を見ていただくなど、いろいろご近所の方に気にかけていただいています。
大家さんとも程よい距離感で、ありがたいことにお任せ状態。顔を合わせても、「草刈りよろしく。柿は勝手に取って食べてね」と住まいに関しても「ご自由に」という感じです。

 

 

これからやっていきたいことを教えてください。
まずは納屋の改装に手を付けたいと考えています。白アリ駆除も済ませましたし、さあこれから、という感じです。また、来年には薪ストーブを据えつけたいと考えています。今日はたまたまですが、馴染みの大工・野島さん(のじま家大工店 代表 野島英史さん/古民家再生に精通した熟練の一級建築士。宮大工)と家のどこに設置したらいいか打ち合わせ。今年は、炭の扱いに慣れておきたいと思っています。
それから、外へ向けて地域の情報をしっかり発信していきたいですね。ここで育った若者たちが戻ってくるようなきっかけづくりに一役買えたらと思っています。

 

 

空き家を探されている方へアドバイスをお願いします。
本当に暮らしたいと考えているのでしたら、預金を見て「半年暮らせるな」と思ったら思い切って会社を休職等をすることをおすすめします。というのも、ある程度まとまった自由な時間がないと、物件を見て回って、決めて、引っ越して、片付けて、という作業が難しいからです。特に古民家の場合は、暮らしが落ち着くまで、いろいろ予想外に労力がかかると思いますので、自分でDIYをしてみたいと考えている方は特に、せめて3ヶ月位は確保した方が良いと思います。
各自治体では移住者受け入れ施策等で、市町で運営しているショートステイ可能な住宅がありますので、気になる地域で借りてみるのがおすすめ。その土地の空気感を味わい、気に入ってから住まいを探してもらいたいですね。金銭面も心配かもしれませんが、野菜や魚などいただき物もあるので(土地にもよりますが)、都会ほどお金を掛けず生活できると思います。いまどき?と驚かれるかもしれませんが、田舎へ行くほど物々交換が息づいています。食費にお金がかからない分、住まいの修繕など思わぬ出費にお金を回せますよ。
家の手入れは、エンターテイメントみたいなもので、頭も体も全部を使う楽しさがあります。みなさんにも、この楽しさを実感してもらいたいですね。