地域の可能性を探りながら 田舎暮らしを楽しみたい
・地元の方の紹介で2015年5月に購入
・地域のコミュニティスペース・町づくりの拠点として活用
・柱・天井・屋根を残して全面改修。田舎暮らしの体験スペースを備える。
・改修費用は3000万円を予定
広島県の真ん中に位置する東広島市福富町。このエリアはもともと人口の少ない場所でしたが、ここ数年の間に移住者が増え、パンと自然食のカフェ、ジェラートとレストラン、うどん店、ドッグランと、立ち寄りやすいお店も増えています。近畿大学の講師 谷川さんは東京出身の都会人。そもそも、どういった経緯で福富町に注目されたのか、家づくりのスタートから教えていただきました。
東広島市に住まいを移されたきっかけを教えてください。
私は、東京生まれの東京育ち。昔から古民家に深く興味を持っており、田舎暮らしに憧れもありました。
講師になる前は、東京で設計事務所を開設し建築士として忙しくしていました。そのころ、田舎でワークショップを開催する機会がありました。実際、2~3日現地に泊まって、現地の方とその地域のこれからについてディスカッションをしたのですが、お互いにとってメリットが無いような、もやもやとした気持ちのまま終えることに。その後「理論だけでなく自分で実践してみよう、田舎で建築を考えてみたい」という思いが募り、大学で建築学を教えることになったことをきっかけに、古民家を探してみることにしました。
この建物とはどのようにして出合ったのでしょうか。
大学で教鞭をとる傍ら、東広島市内で2年ぐらい古民家を探してきました。
まずは不動産を巡りましたね。それから東広島市の空き家バンクを調べて。。。でも、結果的にはそこでは自分の思った物件とは出合えませんでした。ここは、徐々に広がっていった人とのつながりの中でたどり着いたんです。
はじめは、敷地面積が300坪もあったことから「これが理想だ!」というよりは想定より大きすぎて「どうしよう」が正直な感想でした。手におえるかわからず悩んだんですが、この物件へとつながってきた人脈が何よりの宝だと感じて購入することを決意。地域貢献・学生たちの研究スペースを兼ねることを考えたら、環境、ロケーションもよく、結果的にはとてもいい物件だったと感じています。
古民家再生のコンセプトは?
母屋を学生の研究スペース兼、地域のコミュニティスペース・町づくりの拠点として活用したいと考えています。母屋の改修費用は3000万円を予定しています。大規模な改修になるため、かかる費用の一部をクラウドファンディングで集める予定です。
このコミュニティスペースは、住民の方とのワークショップで生まれたコンセプトから、「星降るテラス」に決定しました。
ここは夜になると周囲は真っ暗になります。眼下に広がる田んぼに水が張られる季節、空と大地の両方で星を楽しめる場所にしようとしています。庭に面する開口部は、全面ガラス張りでフルオープンできるようにして、外と緩やかにつながる開放的な空間になる予定です。中には、五右衛門風呂やかまどの台所を設け、昔の生活を体験できるように設計しています。私たち家族が暮らす住居スペースは、納屋を取り壊して新たに建築することを考えています。納屋はもともと牛小屋だったようですよ。
改築の進捗はいかがですか。
2015年5月に購入し、2015年12月に着工しました。
古民家の基礎となる柱や天井などを残し、後は全面的に改修します。
天井の梁はとても立派です。ススで黒くなっている屋根や梁に歴史を感じますね。
今は、床をはがして土台が見えている状態です。土地が平らでないので、基礎作りも一筋縄ではいきません。地元の大工さんの手を借り、古材を活用しながらコツコツ補修しています。もともとの住まいは、部屋ごとに掘りごたつを備え付けていたので、その土台を残して活用しようと考えています。
契約の手続きは?大工さんなど、業者さんはどのようにして探したのでしょうか。
古民家の大家さんが、広島県に本社を構えるハウスメーカーを創業された方で、契約等の手続きはとてもスムーズでした。
改修作業にあたっては、この古民家の隣のお宅が元工務店さんで、そこからのつながりで西条の酒蔵通り、古民家改修を手がけてきた実森建設さんや地元の大工さんと知り合うことができました。同じ近畿大学工学部の非常勤講師・一級建築士の中脇さんも力を貸してくださっています。
大学院生たちも「ペンキ塗るぞ」と声を掛ければ喜んで集まり、作業を行ってくれています。古民家再生過程が、しっかり研究につながっています。
このスペースの活用の理想形を教えてください。
私は、これまでたくさんの学生を社会に送り出してきました。しかし、ここ東広島に残った学生はいません。それは、この土地の魅力がわからないまま、学生生活を送っているからだと考えています。
地域の方と触れ合い、さまざまな体験を通して、地域の魅力を感じてもらいたい。また、地域に若者が定住することは、活気が出て地域の将来につながるもの、と考えています。
私はここを、地域住民との触れ合いの場・活動の拠点にすることで、学生たちの定住の道筋をつけていきたいと考えています。
空き家を探されている方にアドバイスをお願いします。
私の実体験から、いきなり物件を探すのは難しいと考えています。やはり納得のできる物件と出合うまでは時間が必要なので、まずは人とのつながりを探ってみてはいかがでしょうか。
この福富町というエリアは、もともと人口が少なくコミュニティとして規模も小さく“何も特徴のない”場所でした。しかし、新しく外からの移住者を受け入れる風土をつくり、これまでたくさんの実績を残しています。“こだわりの里グループ”という商店会もあるせいか、ウェルカムな雰囲気が移住を後押ししているのでしょうね。
ご希望があれば、私も相談に対応しますよ。田舎暮らしに興味のある方は一度足を運んで、土地の雰囲気を肌で感じてほしいですね。
お問い合わせ先
東広島市建設部住宅課 TEL 082-420-0946
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