“青い空の下で、田んぼや畑を耕す”よりよく生きる理想の生活へ後押ししてくれたのは手厚い補助金と地域のあたたかさでした
全国の空き家バンクで物件探し
手厚い購入補助金等を活用。総額160万円(購入補助150万円,家財処分10万円)
購入費用270万円(修繕・リフォーム費用は別途)
平飼いの養鶏、田んぼ、畑をするため1000㎡程度の農地付き物件を探した
家族が食べられる程度の最低限の収入を得て、のびのびと生活することが理想
広島県の北部、中国地方の真ん中に位置する三次市。そこに縁もゆかりもなく千葉県から移住してきた高橋さん。お子さん6人を含む8人が過ごせる住まいと、農業を営める農地付きの理想の物件を見つけるまでのプロセスをはじめ、現在の暮らし向きなどを語っていただいた。
移住をしようと思ったきっかけは?
勤めていた会社の同僚との係わりの中で、農業に触れたことがきっかけです。もともとあった「農業をしたい」という気持ちにスイッチが入りました。それから物件を探したのですが、移住したいのが先ではないため、住む場所にこだわりはなく、物件の内容重視で探し始めました。
まずは、民間の住宅情報サイトを中心に検索。掲載されていた物件が、どれも高額だったので断念しかけていました。そんなとき、空き家バンクの存在を知り、各市町の空き家バンクサイトを閲覧するようになりました。
物件は、賃貸にするか、購入にするかのこだわりはありませんでした。予算は、購入なら100万円から400、500万円ぐらいで、賃貸なら4万円ぐらいを目安に探していました。
物件内容で重視したポイントは?
農地付きの物件であること。なおかつ農地と住宅が離れていないことを重視しました。
平飼いの養鶏に取り組みたかったので、畑や田んぼと合わせて1000㎡くらい広い農地付きの物件を検索しました。
それから我が家には6人の子どもがいて大所帯のため、広い家も必要。そのためアパートは選択肢になかったですね。戸建てを探しました。
検索していく中で市町によって、いろんな補助金制度があることを知りました。移住にはお金がかかるので、空き家の改修補助や子育て世帯への手当などが手厚いことはとてもありがたいです。移住を検討している人は、事前にチェックしてもらいたいですね。
どんな補助金を活用されたのですか?
三次市の空き家購入サポート事業補助金を150万円,空き家バンク家財等処分費用補助金 10万円を使いました。どちらもほぼ上限額で補助を受けて経済的にも大変助かりました。手厚い補助金は,空き家バンクでの移住ならではの良さだと思います。
ほかにも悩まれた物件はありましたか?
山口県萩市の空き家バンクで見つけた、海の見える眺めのいい物件とどちらにするか悩みました。釣りが好きなんで、趣味も楽しめそうだと思ったんです。萩は、三次と同様に、補助金も手厚かったので魅力的でした。
物件を検討した期間は、約2年半。その間、萩には2回、三次にも2回訪問しました。三次は、電話で問い合わせをした後に内見させていただき、もう一度打ち合わせで行きました。
萩の物件には先約があり、検討中の方の返答がコロナの影響で伸び伸びになっていたことや、農地が800㎡と少し手狭だったこと、養鶏を営むにはお隣が近かったことから断念。要件を満たしている三次の物件に決めました。
改修された個所を教えてください。
この家屋は空き家バンクに掲載されてから5年経っており、傷んでいるところがいろいろありました。床と床下、屋根、配管、納屋の水道と修繕費は高額に。家主さんにお話しすると、購入費から1割程度値引きしていただけました。
一番大変だったのが、床と床下のリフォームです。屋根がかなり大きくて重いため、それを支える大黒柱の根本が傷んでいました。柱をジャッキアップさせて傷んだ部分を補修する予定でしたが、屋根があまりにも重いので、やむなく柱の周りに新たな補強材を入れて修繕を。出費が多く大変でしたが、修繕費(最大300万円)の半額まで補助金を得られたので助かりました。
空き家物件を購入するときの意外な落とし穴なのが、残された家財の処分です。物件によっては不要なものがたくさんあります。三次市は家財処分にも補助金が出るのでありがたいです。私もしっかり活用させていただきました。
移住されることに不安はありませんでしたか?
この土地にゆかりがなかったので、いきなり入っていって地域に馴染めるのか心配でした。
この空き家の所有者さんが,近所の家の一軒一軒に連れて回ってくれたんです。そこで挨拶をして,地域の方に顔を覚えてもらえました。移住前に地域とのつながりが持てました。近所を知っている所有者さんと直接つながれるのも空き家バンクの良さだと思います。
地域の方もいい人ばかりで,農業初心者の私を気にかけていただいているようで、「稲の穂が出ているよ」とか「かぼちゃは芽を摘んで小蔓を出して」など、いろいろ声をかけてくださります。どんどん知り合いが増えていきました。
市役所の定住対策・暮らし支援課の方にも補助金をはじめ移住に向けて熱心にサポートをしていただきました。
三次は暖かくて人情味のある地域。この地域を選んでよかったと思いました。
大きく変わったことはありますか?
「青い空の下で、作物を育てる」夢を実現できました。これまでのように、人に指示されたことを受けて動くのではなく、自分で考え自発的に動くようになったため、心境が一番変わっています。
タイムスケジュールも変わりました。朝は、鶏の餌やりや、いただいた小麦や穀類、ケイ素を混ぜた鶏の餌づくり、午後からは農作業や家屋の修繕作業。日が沈んだら夕飯を食べて就寝という忙しい毎日。自然を相手にしているので、毎日決まったサイクルではありませんが、健康的に過ごしています。
農業を始めたい方にアドバイスをお願いします。
農業は素晴らしいです。初心者にも農業はおススメですが、農業だけでやっていくのは少し厳しいと思います。私たち家族は、農業で成功して利益を出そうと思って農業を始めたわけではありません。半分自給自足のイメージで、自分たちが食べる分だけあればなんとかなる、という基本的な考えを持っています。農機具も譲り受けたり、中古品を購入したり。無理のない範囲でスタートしました。
農業で利益を出そうという方は、実際に利益を出している方に学んだり、専門家に相談されたりすることをおススメします。
個人的には、兼業でもいいのではないかと思います。新型コロナの影響で世の中の考えは大きく変わりました。自分にとって価値あるものは何か、それが大事なんじゃないでしょうか。
移住先や空き家を探されている方にアドバイスをお願いします。
私たちは移住先を決定するまでに2年以上時間をかけました。時間に余裕を持って探されると、きっと望んでいる条件にあった物件と巡り合えると思います。妥協せずに、探し続けてみてほしいですね。
空き家物件は新築ではないので、購入費用以外に修繕費が必ずかかると思っておいてください。
物件選びの際、お手頃の物件を探されると思いますが、私の経験上、価格が低いものは修繕費がかかり、リフォームしてあるものとほぼ同じぐらいの価格になります。リフォーム済みを探すか、購入後リフォームするか。各市町で補助金制度がありますので、何が自分たちは何が利用できるかチェックして、予算を組むことをおすすめします。
最後に今後の目標を教えてください。
これまで鶏舎を建てたり、屋根や納屋を修繕したりと大変でしたが、もともとDIYが好きなので苦痛を感じることはありませんでした。移住前に取得した第二種電気工事士の資格も、寒い冬に壁の中の水道管が凍ったときの修理に役立ちました (笑)
今も趣味の釣りを楽しむ時間もないぐらい忙しいですが、新しく田んぼを増やしたいですし、鶏舎ももう一つ建てようと考えています。
青い空の下で、田畑を耕すという夢は、ここで終わりはありません。次々と湧いてくる思いをカタチにするため、精力的に動いていきたいと思います。
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