昔ながらのいいところはそのままに いやしの空間を実現
・世羅町の空き家バンクを利用して購入
・購入費用は300万円
・店舗部分のみリフォーム
・古民家の魅力を活かして改修
長年、長閑な場所で喫茶店を開きたいと考えていた西原さん。世羅町は、祖父母が暮らしていた町で、馴染みのある場所。標高350~450mに広がる世羅台地は、穏やかな気候に恵まれたおいしい野菜や果物の名産地でもあり、西原さんにとってカフェを開くのに最適な場所だったそう。
そんな西原さんが理想の空き家を見つけ、カフェをオープンするまでの道のりを教えてもらった。
世羅町で空き家を探された経緯を教えてください。
姉妹でカフェを開きたいと、ぼんやりとですがずっと思っていました。
世羅町は、父方の祖父母が暮らしていた町なので、もともと馴染みがある場所。祖父母の住居を改修してカフェをしてもよかったんですが、10数年、人が住んでいなかったので、改修程度では済まなくて。ネットを通して物件を探すことにしました。
いろいろ方法を変えて探しても、この空き家物件に行きつくので、きっとご縁があると思い、世羅町役場の方にお願いして見学させてもらうことにしました。他にも2~3軒、見学しましたが、いちばんピンときたのがこの空き家。「ここでお店をしたい」と心が決まりました。
どのようにリフォームを進めていきましたか。
カフェを始める前は建設会社に勤めていたので、一緒に仕事をしていた“心頼のおける”建築士にお願いしてリフォームしました。
築140年のこの物件は、もともと大工さんが暮らされていた住まいだったので、建物そのものが丈夫に造られていました。それに、1年前まで賃貸として貸し出しもされていたため、傷みが少なかったのも良かった点ですね。そこで、予算の都合もあり、カフェとして利用するスペースに絞ってリフォームを。残りの住居スペースは、ほぼ手つかずのままなんです。
カフェスペースも、厨房、トイレ、床は新しく、縁側、玄関や梁、天井など、経年が魅力的な部分はそのまま活かすリフォームをお願いしました。
テーブルを組み立てたり、障子を貼り換えたり、看板を作ったりできることは自分たちで準備を。始めるにあたって、いろいろバタバタした部分もありますが、購入して4ヵ月後、2015年12月にCafe Repos(カフェ・ルポ)を何とかオープンさせることができました。
こだわって改修した部分を教えてください。
改修した玄関は、業者さんのアドバイスで、客席から丸見えにならないよう、靴を脱ぐ場所に壁を立てました。手すり代わりにもなるので、使いやすくなってよかったと思っています。また、お客さまから、“外から見た純和風な感じと店内の雰囲気が全然違う”、とよく言われます。客席スペースはもともと畳の間でした。床に張り替えたのは、ご年配の方でも座りやすいよう、椅子にしたかったから。ご年配の常連さんは2~3時間過ごされることもあるので、のんびり、くつろげる空間にできたのではと思っています。
昔のまま残したお気に入りの場所を教えてください。
残したのは、玄関の梁や建具、縁側です。建具のガラスはとても気に入っています。縁側からの風景もお気に入りです。軒裏も手を加えることなく、昔のままです。
面白いのは天井にのぞき穴があること。開けると、屋根裏を見ることができます。高い天井と太い梁、昔囲炉裏があったであろう梁にススが残っていたり、断熱材代わりに使われていた藁が残っていたり。140年の歴史を感じます。
これから手掛けたいことはありますか。
暖簾や看板、店内のディスプレイを手作りしています。なかでも店内は、これからも、四季を感じてもらえるよう、季節に合わせて変化させていきたいですね。
住まいの空間は、障子やふすまの張り替えなど、自分たちでできることを少しずつやっていけたらと思っています。
プリザーブドフラワーの講師資格を持っているので、将来、教室を開いてもいいかなとか、蔵を利用して陶芸展など開催したいな、とか夢は膨らんでいます。
移住して実感したことを教えてください。
私たちは、祖父母が世羅の人間だったので、比較的早く地域に溶け込むことができました。世羅町(なかでもここ徳市)は、移住者に対してウェルカムなエリアです。地域で開催する夏祭り、神楽、とんどなど、さまざまな行事にも声を掛けていただけるので、積極的に参加して地域の方々と交流しています。また、世羅には先輩移住者がたくさんいらっしゃるので、面白いお話もたくさん聞くことができますよ。世羅は自然が豊かなぶん、たくさん動物も暮らしています。野菜を育てるときは被害もあったりするので、どうやって動物と共存したらいいのかなど、アドバイスももらえますよ。暮らしていた福山市内と違って買い物ひとつ、車で20分かけてスーパーに行かないといけないので最初は不便さを感じていましたが、それも1~2ヵ月のこと。すぐに適応しました。
空き家を探されている方にアドバイスをお願いします。
カフェを始めようと決めてからは、即行動!実は私、物件を決める前に会社を辞めてしまったんです。気に入った空き家物件もすぐに見つかり、なんとかなるだろうと思っていたら、カフェを開くにあたって、さまざまな条例にぶつかってしまって。2~3ヶ月、話が前に進まなかったときは、「無職なのにカフェが開けなかったらどうしよう」と本当に困りました。でも諦めず、世羅町役場の方にもいろいろ協力していただきながら一つひとつ問題を片付けて、どうにか手続きを完了させ、予定通り開業することができました。
その土地、その物件によってスムーズにいかないこともあるかもしれません。私は馴染みの地域だったのでよかったのですが、その土地のことを知りたい場合は、お試し住宅など借りて生活したり、移住者のお話を聞いたりするのもおすすめです。空き家のことで疑問があれば、町役場の窓口の方にご相談を。私たちの場合、購入手続きをはじめ、入居前に、地域の自治会長さんと顔合わせの機会を作っていただくなど、大変お世話になりました。丁寧に対応していただけるので安心ですよ。
お問い合わせ先
世羅町企画課 TEL 0847-22-3206
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